VIII-C8 AIオーバービュー表示キーワード数を追う―SaaS向けKPI設計
SaaS向けKPI設計
このレッスンの狙い:AIオーバービュー表示キーワード数・AI経由問い合わせ数をSaaS特有のKPIとして設計できるようになる。
最終更新: 2026-07-25
この記事の要点
- AIオーバービュー表示キーワード数・AI経由問い合わせ数をSaaS特有のKPIとして設計できるようになる。
- 計測の壁を理解する
- SaaS業界特有のKPI候補
前のレッスンで見た事例は、なんとなく「良くなった」と語っているのではなく、具体的な指標の変化として語られていました。なんとなくの手応えではなく、具体的な指標の変化として語れるようになるには、公開前にKPIを設計しておく必要があります。今回は、SaaS業界向けのKPI設計の考え方を扱います。
計測の壁を理解する
用語解説
「GA4(Google Analytics 4)」とは、Googleが提供する標準的なアクセス解析ツールです。既定設定のままでは、ChatGPT等のAIサービスからのリファラルトラフィックは「Referral」または「Unassigned」という分類に一括でまとめられてしまい、AI経由のアクセスかどうかを見分けられません。この計測の壁は、業界を問わず共通する技術的な課題です。
SaaS業界特有のKPI候補
前のレッスンで見たchot Inc.の事例では、AI経由リファラーセッション数・AIオーバービュー表示キーワード数・月間問い合わせ数という3つの指標を、施策の前後で同じ条件で比較していたと報告されています(出典: chot Inc., 2026年7月確認)。
AI経由リファラーセッション数
AI経由でサイトに来た訪問数
AIオーバービュー表示キーワード数
自社が回答内に表示されるキーワードの数
AI経由問い合わせ数
AI経由訪問からの実際の問い合わせ件数
具体例
「経費精算 SaaS 比較」というクエリでChatGPTに聞いたとき、自社が回答に含まれていれば1、含まれていなければ0として記録し、月次で自社の言及率を数えていく、というのが最もシンプルな運用イメージです。
表示回数と問い合わせ数は分けて追う
AIオーバービュー表示キーワード数が増えても、それがそのまま問い合わせ増加に直結するとは限りません。「表示された数」と「行動につながった数」は別の指標として、どちらも記録しておく必要があります。表示回数だけを見て満足してしまうと、実際の商談・問い合わせへの貢献度を見失う恐れがあります。
ベースラインの取り方で結果の説得力が変わる
chot Inc.の事例が説得力を持つのは、施策の前後を同じクエリ・同じ条件で比較していたからです。逆に言えば、施策後に急に有利なクエリだけを新しく計測対象へ加えてしまうと、数字が改善して見えても実態を反映しない比較になりかねません。ベースラインを記録する段階でクエリのリストを固定し、施策後もそのリストのまま追い続けることを徹底してください。クエリのリストを作る際は、自社カテゴリ名そのもの(例:「経費精算 SaaS」)だけでなく、比較クエリ(「〇〇 vs △△」)や機能特化クエリ(「経費精算 領収書 OCR」)など、異なる粒度を混ぜておくと、どの粒度で自社が強い・弱いかが見えやすくなります。記録を担当する人・記録する曜日をあらかじめ決めておくことも、地味ですが継続の可否を左右する重要なポイントです。
実践ステップ
- 自社の製品カテゴリ名・比較クエリを最低10個リストアップする
- それぞれのクエリで、複数のAIプラットフォームでの自社の表示・言及有無を記録する(ベースライン)
- AI経由リファラーセッション数を計測できる仕組みを用意する(既存のGA4設定の見直しを含む)
- 月間問い合わせフォームに「AI経由で知った」等の選択肢を追加することも検討する
- 3か月ごとにベースラインと比較し、変化を記録する
まとめ
SaaS向けのAIO計測は、GA4の既定設定だけでは不十分だという前提に立つ必要があります。「表示」と「問い合わせ」という2種類の指標を、同じ条件で継続的に記録することが、chot Inc.の事例のような変化を語れるようになる土台です。次のレッスンでは、ここまでの内容をチェックリストの形でまとめて振り返ります。
このレッスンはテキストとスライドで学べます。スライドは上のビューアからご覧ください。
確認テスト
選択肢をクリックすると、その場で正誤と解説が表示されます。
Q1. GA4の既定設定では、ChatGPT等のAI経由リファラルトラフィックを自動的に正確に分類できる。
正しくは、既定設定のままではReferralまたはUnassignedに一括分類され、AI経由かどうかを見分けられない。
Q2. chot Inc.の事例で使われた3つの指標に含まれないものはどれか。
従業員エンゲージメントスコアは含まれていない。
Q3. ベースラインを記録する際に重要とされることは何か。
クエリのリストを固定して施策後も同じリストで追い続けることが説得力のある比較につながるとされている。
このレッスンのFAQ
Q. 「表示回数」と「問い合わせ」は同じ指標として扱ってよいか?
いいえ、別の指標として両方記録しておく必要があり、表示回数だけを見て満足すると実際の貢献度を見失う恐れがあります。
Q. クエリのリストを作る際のポイントは何か?
カテゴリ名だけでなく比較クエリや機能特化クエリなど異なる粒度を混ぜておくと、どの粒度で自社が強い・弱いかが見えやすくなります。
Q. KPI計測は誰がいつ記録すべきか?
記録を担当する人・記録する曜日をあらかじめ決めておくことが、継続の可否を左右する重要なポイントとされています。